身体に関わる大切なことなので、詳しく紹介していきます。
コンドームや低用量ピルの服用など避妊にはいろいろな方法がありますが、日本で一番広く認知されている方法は、男性用コンドームによる避妊法です。
価格も安くどこでも購入することができることから、日本では人気の高いコンドームによる避妊ですが、リスクもゼロではありません。
男性側の知識不足から付け方が不十分だったり、付けることを忘れてしまったり、途中で破れたり、外れてしまったり…と、決して確実な方法というわけではありません。
もしも避妊に失敗してしまったら、「アフターピル」という薬の出番です。性交後に服用することで妊娠率を下げる便利な薬ですが、副作用も少なくはないので、使用するにあたり注意が必要です。
今回はアフターピルの副作用についてお話しします。
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目次
アフターピルの主な副作用
アフターピルは大きく分けて、2種類のものがあります。
昔からある『ヤッペ法』と、新しく開発されてきた『ノルレボ法』です。それぞれ使用する薬剤や飲む間隔、錠数が異なります。
【ヤッペ法】
ヤッペ法で使用されるのは、「中用量ピル」といわれる種類の薬です。
「レボノルゲストレル」という黄体ホルモンと、「エチニルエストラジオール」という卵胞ホルモンを含有していて、人工的に生理を起こさせる働きがあります。
【ノルレボ法】
ノルレボ法では、「レボノルゲストレル」という黄体ホルモンのみが含まれる薬を使用します。働きはヤッペ法と同じく、人工的に生理を起こさせるものと考えてください。ヤッペ法に比べてノルレボ法は副作用がおこりにくいため、今はノルレボ法の方を採用するドクターが増えてきています。
あらわれる主な副作用の内容は、どちらも悪心や嘔吐などが中心です。次の項で、くわしくみていきましょう。
アフターピルの種類別の副作用
ヤッペ法(プラノバール)
ヤッペ法では、服用した約半数以上の人に副作用があらわれます。
主な副作用には悪心・嘔吐、食欲不振などの消化器症状があります。また、重大な副作用として、血管内で血栓ができて詰まらせてしまう、「血栓症」が知られています。
ヤッペ法はノルレボ法と比べて1錠当たりの含有成分が多いため、どうしても副作用が大きくなってしまうことが避けられません。薬価は決まっていますが、避妊目的での使用は保険適用外です。
ノルレボ法
ノルレボ法では、副作用があらわれる可能性が非常に低いことが知られています。副作用は、成分の吸収とともに起こる急激なホルモンバランスの変化が原因であるため、時間とともに軽くなっていきます。
症状としては、頭痛(12.3%)吐き気(9.2%)倦怠感、疲労感(7.7%)眠くなる(6.2%)などが代表的です。
他にも、胸の張りや腹痛、ニキビといった副作用が出ることもあります。
また、ほてりを感じることもありますが、これもホルモンバランスの変化のよるもので、体が生理前のようになっているために起こります。長期間続かない限りは、過度に心配する必要はありません。日本では薬価が未収載で、こちらもヤッペ法と同じく自由診療となります。
ヤッペ法、ノルレボ法ともに副作用が出る可能性はゼロではありませんが、出やすさでいうとノルレボ法の方が断然低いです。価格ではノルレボのほうが高くなりますが、効果や副作用を考えると、ノルレボ法を選択することがおすすめです。
アフターピルの副作用はいつから始まる?
ヤッペ法でもノルレボ法でも、アフターピルの服用による副作用は、服用後24時間くらいしてからあらわれることがほとんどです。これは服用した薬が体内で吸収され、効果を発揮するまでに時間がかかるためです。
アフターピルの副作用はいつまで?
副作用は徐々におさまりますが、体内から有効成分が完全に排出されるまでは、安心することはできません。どちらの方法を選択しても、服用してから3日後くらいまでは注意をするようにしましょう。先ほどもご説明したとおり、副作用の多くは成分の吸収とともに起こる急激なホルモンバランスの変化が原因なので、時間とともに軽くなっていくと考えられます。
アフターピルの副作用に関するQ&A
副作用が出ない人はいるの?
ヤッペ法では、服用した約半数の方に副作用があらわれましたが、ノルレボ法では数%の方にしか副作用があらわれていません。よって、服用した全員に副作用があらわれるというわけではなく、副作用が出ない人もいるのです。
しかし、副作用は毎回確率的におこる・おこらないというものではなく、年齢・性別・体質など様々な要因がからみあっておこります。一度副作用が出た人は副作用を起こしやすい可能性があるので、同じ薬を服用する際には、特に注意をはらいましょう。
過去にヤッペ法で副作用が出てつらい思いをした方は、ノルレボ法などの異なる方法に変更できないか、医師に相談してみましょう。また、アフターピルを使用しなくてもよいように、しっかりと避妊をおこなうことが重要です。
副作用が出たらどうしたら良いの?
病院に行って医師に相談しましょう。ヤッペ法での投薬の場合あらかじめ副作用が出ることを想定して吐き気止めが同時に処方されることもあります。
他の薬と併用して飲んで大丈夫なの?
アフターピルはほかの薬に対する影響が大きいことが知られており、併用することで様々な問題がおこる可能性があります。ヤッペ法で使用するプラノバール錠では、以下のような影響があることがわかっています。
薬剤名 | 影響 |
---|---|
オムビタスビル水和物・パリタプレビル水和物・リトナビル | ALT<GPT>が上昇 |
副腎皮質ホルモン剤 | 作用が増加 |
プレドニゾロン | 作用が増加 |
三環系抗うつ剤 | 作用が増加 |
イミプラミン | 作用が増加 |
セレギリン塩酸塩 | 作用が増加 |
シクロスポリン | 作用が増加 |
テオフィリン | 作用が増加 |
オメプラゾール | 作用が増加 |
リファンピシン類 | 本剤の効果の低下 |
バルビツール酸誘導体 | 本剤の効果の低下 |
フェノバルビタール | 本剤の効果の低下 |
ヒダントイン系抗てんかん剤 | 本剤の効果の低下 |
フェニトインナトリウム | 本剤の効果の低下 |
カルバマゼピン | 本剤の効果の低下 |
ボセンタン | 本剤の効果の低下 |
モダフィニル | 本剤の効果の低下 |
トピラマート | 本剤の効果の低下 |
テトラサイクリン系抗生物質 | 本剤の効果の低下 |
ペニシリン系抗生物質 | 本剤の効果の低下 |
アンピシリン水和物 | 本剤の効果の低下 |
リファンピシン類 | 不正性器出血の発現率が増加 |
バルビツール酸誘導体 | 不正性器出血の発現率が増加 |
フェノバルビタール | 不正性器出血の発現率が増加 |
ヒダントイン系抗てんかん剤 | 不正性器出血の発現率が増加 |
フェニトインナトリウム | 不正性器出血の発現率が増加 |
カルバマゼピン | 不正性器出血の発現率が増加 |
ボセンタン | 不正性器出血の発現率が増加 |
モダフィニル | 不正性器出血の発現率が増加 |
トピラマート | 不正性器出血の発現率が増加 |
テトラサイクリン系抗生物質 | 不正性器出血の発現率が増加 |
ペニシリン系抗生物質 | 不正性器出血の発現率が増加 |
アンピシリン水和物 | 不正性器出血の発現率が増加 |
塩酸テルビナフィン | 黄体ホルモン・卵胞ホルモン配合剤との併用で月経異常の発現率が増加 |
Gn-RH誘導体 | 作用を低下 |
酢酸ブセレリン | 作用を低下 |
血糖降下剤 | 作用が低下 |
インスリン製剤 | 作用が低下 |
スルホニルウレア系薬剤 | 作用が低下 |
スルホンアミド系薬剤 | 作用が低下 |
ビグアナイド系製剤 | 作用が低下 |
ラモトリギン | 血中濃度が低下 |
モルヒネ | 血中濃度が低下 |
サリチル酸 | 血中濃度が低下 |
アセトアミノフェン | 血中濃度が低下 |
テラプレビル | 本剤の作用が低下 |
HIVプロテアーゼ阻害剤 | 本剤の作用が低下 |
メシル酸ネルフィナビル | 本剤の作用が低下 |
リトナビル | 本剤の作用が低下 |
ダルナビル | 本剤の作用が低下 |
ロピナビル・リトナビル配合剤 | 本剤の作用が低下 |
非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤 | 本剤の作用が低下 |
ネビラピン | 本剤の作用が低下 |
ホスアンプレナビル | 本剤の作用が低下 |
アタザナビル | 本剤の血中濃度が上昇 |
インジナビル | 本剤の血中濃度が上昇 |
エトラビリン | 本剤の血中濃度が上昇 |
フルコナゾール | 本剤の血中濃度が上昇 |
ボリコナゾール | 本剤の血中濃度が上昇 血中濃度が上昇 |
アセトアミノフェン | 本剤の血中濃度が上昇 |
いずれも医師、薬剤師でなくては、すべてを把握することは難しいでしょう。なので、処方される際の問診で、必ず服用している薬について医師に伝えましょう。
アフターピルの副作用を理解して服用しよう
アフターピルの歴史は長く、ノルレボ法が用いられるようになってから、副作用のあらわれる頻度は大きく減少しました。しかし、それでも100%出ないというわけではありません。
すべての薬には少なからず、何らかの副作用があります。副作用を完全に無くすことは難しいので、専門家の判断の下で、適切な方法で使用することが求められています。
アフターピルにはホルモンが配合されており、風邪やねんざなどに用いる薬と比べると、副作用のリスクは大きくなってしまいます。「避妊に失敗してもアフターピルがあるから大丈夫」と安易に考えるのではなく、リスクもよく理解した上で、適切な避妊を行いましょう。